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これってドライマウス?
〜その2:快適に過ごすためのポイントいろいろ〜

 前回のトピックス(その1)ではドライマウス(口腔乾燥症)の原因についてお話しましたが、今回はその症状を緩和するための効果的な方法についてご紹介いたします。お口を潤す唾液の素晴らしさも含めて、ぜひ一度自分のお口の中を意識するきっかけにしてください。

 ドライマウスになると? 〜唾液のひみつ〜
 ドライマウスとは、何らかの原因によって唾液が出にくくなったりお口の中が乾燥して、様々な症状を生じることをいいます。
 ドライマウスの主症状であるお口の乾燥感だけでなく、お口の乾燥症状チェック(前回のトピックス)で挙げたような、他人には計り知れない違和感、不快感を自覚したり、様々な弊害があるのです。

 実は、これは唾液の素晴らしさと関わっています。
 日頃あまり意識することのない唾液ですが、お口の健康、ひいては身体全体の健康を保つためには欠かせない大切なもの。 個人差はありますが、健康な人の唾液は一日に1〜1.5リットルも分泌されています。
 唾液の役割には、以下のことが挙げられます。

 1)消化作用:アミラーゼという酵素がでんぷんを分解する
 2)粘膜保護作用
 3)円滑作用:食品を噛んで飲み込む、発音するなどの機能をスムーズに行うために働く
 4)溶媒作用:味は食品の味質が唾液に溶けてはじめて味覚としてとらえられる
 5)洗浄作用:口腔内や歯面を洗い流して、食物残渣(食べカス)が残るのを防ぐ
 6)抗菌および殺菌作用:細菌が繁殖するのを防ぐ
 7)緩衝作用:お口の中に酸が入ると、それを中和するように働く
 8)抗脱灰作用:歯の脱灰作用を防ぐと共に、再石灰化に関与してむし歯を防止する
 9)排泄作用:体内に投与された薬物や化学物質が唾液中に排泄される

 これだけ多くのことに関わる唾液が出なくなったら、その影響がいかに大きいかわかりますよね。

 たとえば、お口の中の影響で言えば、ドライマウスの方ではむし歯の進行が非常に早く、治療しても次々とまたむし歯が生じる、あるいはいくら歯磨きをがんばっても歯周病がちっともよくならない、やけに口臭が気になる、ということがおこります。入れ歯をお使いの方では調整を繰り返してもどこか痛かったりはずれやすくて困る、といった症状として現れます。

 高齢者の中で、要介護者の14%には明らかなドライマウスが認められるとされ、お口の中は唾液がないために食事や会話に支障がでたり、食べカスが流れないので非常に不潔になりやすく、カビが繁殖することもあります。

 何か他の原因から生じていると思っていたことが、お口の中を潤すことで改善する場合もあります。気になる症状がドライマウスによるものではないか、一度チェックしてみてください。
 

 ドライマウス対策法
 ドライマウスの症状を改善するにはお口の中を潤せばよいわけですが、それはドライマウスの原因ごとに対処する必要があります。
 原因別に対策法を挙げましたので、当てはまる事をぜひ一度実行してみてください。

 ドライマウス対策法:口腔内に原因があるもの
1.口呼吸
 :習慣的に口で呼吸する癖をなくす。特に鼻炎やアデノイドの人は耳鼻科を受診してそちらの治療を行う睡眠時の口呼吸を防止するにはナイトガードを利用するとよい(歯科医院で作製。保険適用)。

2.咀嚼回数の不足
 
:噛む回数を増やすには、まず食事中に水物を飲まない、一口を小さめにして両方の奥歯でゆっくり噛む、という習慣をつける。
 幼児、学童期は特に味わって食べることを教え、「早く食べなさい!」とせかさないことがポイント!

3.嗜好品の過剰摂取
 
ニコチン(タバコ)やカフェイン(コーヒー・紅茶・緑茶)は利尿作用をもつため、ほどほどに。

4.水分量の不足
 
:成人では一日あたり体重の1/20の水分摂取が必要とされている(例えば体重50キロの人では2.5リットル)。食事などで自然にとれるのは約1.5リットルなので、残りを食間に水分として補給する必要がある。飲みすぎない程度に飲みましょう。

5.微量元素の摂取不足
 
:亜鉛が含まれている食品(海藻や豆類、ごま、アーモンド、カキなど)を適度に取るように心掛け、食品添加物や加工品の多量摂取を避ける。

6.ハミガキ剤の過剰使用
 :ラウリル硫酸ナトリウム無配合の歯磨剤を使う。あるいは歯磨剤ほんの少しか無しでみがきましょう。
 
 ドライマウス対策法:全身の健康状態に原因があるもの
 以下の原因によるドライマウスでは、症状の緩和は対症療法主体になる

1.シェーグレン症候群(原因不明の全身性自己免疫疾患。30〜60歳の女性に好発し、ドライマウスとドライアイその他全身に様々な病変を呈する)
2.シェーグレン症候群以外の唾液腺の病気
3.ホルモン・代謝系の異常(糖尿病や尿崩症、甲状腺機能異常)
4.発熱、下痢、嘔吐、過剰な発汗、出血などによる体内の水分量の減少
5.放射線による障害(ガンの治療等)
6.神経性の要因(頭頚部のケガや手術で唾液腺に関わる神経が障害されたとき、あるいはうつ病)
7.加齢による唾液分泌量の減少
8.薬物の副作用によるもの利尿剤や降圧剤、抗うつ薬、抗不安薬、抗パーキンソン薬)

 これらは、ほとんどが健康を取り戻すために必要な治療の副作用としてドライマウスが生じていたり、唾液腺自体が回復の見込みが無いことから、原因を取り除くことは困難です。
 
この場合は口腔内の症状をできるだけ緩和するための対症療法が適当となります。
 それには、1)唾液そのものをできるだけ分泌させるような
薬剤の利用、2)口腔内を潤すうがい液やジェルの利用があります。

 
薬剤については、治療をうけているかかりつけの病院で相談すると適切なものを処方してもらえるでしょう。
 例えば、残っている唾液腺を刺激して唾液を出やすくするお薬としては、塩酸セビメリン(商品名「サリグレン」、「エボザック」)があります。(これはシェーグレン症候群の方では保険適用治療薬です)
 艦砲の薬では、白虎加人参湯、麦門冬湯、柴苓湯などが効果的といわれています。

 口腔内を保湿するためのうがい液やジェルについては様々な商品が発売されており、中でも効果的とされるのは保湿効果が高く長時間続くジェルオーラルバランス、詳しくはおかもと歯科の店へ)です。
 高齢者でも塗りやすく、入れ歯では裏側に塗って効果が得られます。
 現在は残念ながら保険適用外ですが、つらい症状の緩和には大変効果的な商品です。


 おわりに
 ドライマウスについて「勉強しなくては!」と感じたのは、放射線療法を行っているある患者さんのお口の症状からでした。

 何年か前から通院しており、放射線療法による口腔乾燥を緩和するために人工唾液を使っていらっしゃることは知っていましたが、数ヶ月の間を開けて来院したところ、歯がむし歯ですっかり崩れて下の前歯は折れていたのです。他の前歯はいつ折れてもおかしくない状況。
 正直なところ、それほど早くむし歯が進行するのを見たのは始めての経験でした。放射線による影響もありますが、唾液が無いということの恐ろしさを見せつけられた気がしました。

 それ以来、ドライマウスについての資料に目を通すうち、あの関節リュウマチの患者さんももしかして、などと気になる方がちらほら思い当たるようになりました。中年の女性では舌先の痛みや口の渇きを訴えられる方が結構いらっしゃいます。入れ歯の方でも、どうやってもうまく安定してくれないという場合はドライマウスを疑うようになりました。
 さらにお子さんでもハグキが赤い、虫歯が多い場合に口呼吸していることが多いのです。

 年齢を問わず可能性があるドライマウス。ようやく歯科界で大きな問題として取り上げられはじめたばかりです。
 これからもしっかり勉強し続けなくては、という気持ちを込めてまとめたトピックスでした。
 文字ばかりで少々硬い内容にもかかわらず目を通してくださった方からのご意見・ご感想をお待ちしています

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