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もしかしてしてる?はぎしり・くいしばり
〜症状と治療方法


 みなさんはご自分がはぎしり、あるいはくいしばりをしていると思いますか?

 きっと「多分していない」と答える方がほとんどなのでは。
 でも、96%の人が無意識にはぎしりやくいしばりをしているという報告もあります(Peterson, 1956)。
 ごく普通に見られる一種の癖といえるでしょう。

 このはぎしりやくいしばりがお口の健康にどんな影響を及ぼしているのか、またその解消法についてを取り上げました。

 はぎしり・くいしばりがあるとどうなるの?
 はぎしり・くいしばりはほとんどの人にみられる癖であり、問題を起こさないならどうということはありません。

 でも時に、次のような症状を生じることがあるのです。

1)歯への障害
 歯が異常に擦り減る、歯が破折する、歯がしみる、かむと痛い、などの症状。

 歯に異常な力が加わることで、歯の表層にあるエナメル質や象牙質がパリパリと剥離して、くさび状にえぐれたような状態になることが明らかとなっています。
 以前はハブラシを当てる力が強かったり、ブラシの毛が硬すぎて削れたものと考えられていましたが、はぎしり・くいしばりの力で歯が欠けて、さらにハブラシで悪化させているという場合が少なくないようです。

(歯の先端が異常に擦り減っています)
 
 (歯に異常な力が加わると、緑で示したような所の表面が剥離してえぐれてしまいます。山本ら、1996)

2)歯周組織への障害
 歯肉炎や歯周炎(歯槽膿漏)を悪化させる。

3)顎関節への障害
 顎関節は歯に加わった力を受け止めるので、はぎしり・くいしばりによって異常な力を受けると痛みや開口障害(口を開けにくい、大きく開けられない、開けると引っかかって戻らないなど)、カクッという音が発生するといった障害が生じる。

4)全身への障害
 顔面の痛み、頭痛、肩こり、腕のしびれ、腰痛など、直接関係なさそうな症状がはぎしり・くいしばりの影響を受けていることがある。

5)その他
 舌痛症、むち打ち症状、倦怠感など。

 これらすべての症状がはぎしり・くいしばりからくるわけではありませんが、無用な悪い癖は治しておいた方が良いでしょう。

 はぎしり・くいしばりに気づくには?
 一般的にはぎしりといわれるのは、睡眠中に上下の歯をすり合わせてギリギリ、カリカリと音を立てることです。
 睡眠中なので本人はまったく知らず、一緒に寝ている家族に指摘されたり、たまたま友人や会社の人と旅行して指摘され気づいた、ということがほとんどです。
 こどももカリカリと音を立てる場合がありますが、ほとんどが一時的なもので心配いりません。
 でも大人の場合、ひどい人では毎晩のように寝静まったころにギリギリ、カリカリと枕もとで音を立てますので、そばにいる人は安眠を妨げられて文句のひとつも言いたくなります。

 これに対してくいしばりは、音を立てず上下の歯をかみ合わせてぐっと力を入れる状態をいいます。
 左右均等に噛む場合もあれば、左右どちらか片方に力をいれてかみしめる場合もあります。
 他人には迷惑をかけませんが、睡眠中だけでなく起きて活動している間も無意識のうちにくいしばっていることがあります。
 何かに夢中になっているときやストレスを感じているとき
など、人によってくいしばりが起こるきっかけがあるようですが、ほとんど自覚していません。
 また、瞬間的に力を必要とする職種(荷物の積み下ろし作業や大工作業など)や、プロのスポーツ選手などではグッとくいしばることが頻繁にあります。

 《はぎしり・くいしばりチェック》
 あなたには思い当たることがありますか?

 朝起きたとき:あごの筋肉に疲労感重たい感じ痛みなどがありますか?

 仕事や遊びに没頭しているとき:すこし口を開け気味にして、歯と歯が触れないようにして5分くらい平気ですか?

 何気ない行動の中で:日頃よく使う道具や、よく目にする場所に何か印をつけてみましょう。
 例えば、主婦なら包丁や蛇口、車に乗る人ならハンドルやメータ−、事務が多い人ではペンやキーボードでよいでしょう。
 カラーテープやシールなどを貼って、それが目についたときに必ず「はぎしり・くいしばりしてない?」とチェックするのです。ふとした瞬間で「してる!」と気づくことがありましたか?

 はぎしり・くいしばりの解消はまず自分の気づきが第一歩。自覚していないと、どんな治療を行っても症状は繰り返すばかりだからです。
 では、気づいたらどうやって解消するかをお話します。

 どうやって解消する? 〜 日中のくいしばり 〜 
 日中のくいしばりに気づいたら、すぐに肩を上下させて首から下の力を思い切り抜いてください。
 ふうっと一息ついたところで、頬の力を抜いて歯をかみあわせないようにしてまた仕事や遊びに向かってください。

 できればはじめのうちは口を半開きにするとよいのですが、人前でははばかられる、という方は唇だけは合わせて、歯はかまずにいましょう。

 こうやって気づいたときにリラックスすることを繰り返すと、くいしばりそうなときには自然と気づいてやめられるようになります。

 また、筋肉の緊張に気づくためのリラクゼーショントレーニングを利用するとさらに効果があります。

 どうやって解消する? 〜 睡眠中のはぎしり・くいしばり 〜
 無意識の時間帯なので、睡眠中の歯ぎしり・くいしばりはとてもやめられないと思われるかもしれません。
 でも、私たちの体の中は、無意識だと思っていってもちゃんと意識が働いており、その気になれば歯をかみ合わせずにリラックスして睡眠することができるのです。

 成功の秘訣はどれだけその気になるかにかかっています。

《前準備》
 枕を低くしましょう。
 そして、頭の後ろの一番出っ張ったところより首の付け根近くに枕をあてるようにします。
 バスタオルなどを丸めて枕にしてもよいでしょう。
 こうすると頭が上を向くので、口が自然と開きやすくなります。
 横向きに寝る方は、頭が背筋とまっすぐになるように枕を調節してください。
 布団に入ったら、ここは眠るだけの場所と思って、できるだけ何も考えないようにします。

《本番(ふとんに横になって)》
 @思いっきりかみしめる⇒1〜2秒後にふっとアゴの力を全部抜く
 わずかに口が開くと思います。
 その位置が理想的なリラックスしたアゴの位置で、ここで一晩中眠ることができればいいのです。
 次に、思いっきり大きな口を開くガクンと脱力する
 (ただし、アゴの関節が痛くて大きく開けられない人は、無理せず開けられるところまで)
 脱力すると、先ほどと同じリラックスした位置になるでしょう。

 A @の動作を呼吸を合わせて行う
 力を入れるときに息を吸って、いったん1〜2秒止めてから脱力するときに一気に息を吐き出します

 B肩をいっぱいすぼめるようにして、その力を思い切り脱力する
 このときにも呼吸を合わせます。

 C胸、腹、太ももの脱力

 D最後に足の先からその日のストレスをすべて追い出してやるような気持ちで大きく息を吐き出しながら脱力
 何回もやっていると、手のひらや足の裏が少し温かくなった感じがしてきます。

 E最後にもう一度アゴの力が抜けていることを確かめる

 F自己暗示
 呼吸に意識を傾け、吐くときに脱力を繰り返しながら、手足やお腹が温かくなるのをもっと感じてください。
 息を吐くときに「リラックス、リラックス」、「いい気分、いい気分」、「楽だ、楽だ」などと自分がリラックスできる言葉を唱えましょう。
 そして、次の朝、今ある症状がすべて無くなって、すっきり爽やかに目覚めるあなたの姿をイメージしながら眠りにはいってください。
 
 《Q&A》
Q1:口を開いて寝たらのどがかわきませんか?
 ⇒次の朝、口の中が乾いているようなら、リラックスした証拠です。
 自己暗示がしっかりできるようになったら、上下の歯をかみ合わせずに離したまま唇だけ合わすようにしてください。のどの渇きがなくなるでしょう。

Q2:自己暗示がうまくいっているかどうかの判断は?
 ⇒自己暗示が成功している度合いによって、始めはかみしめたあとに目が覚めるようです。
 やがて、かみしめているときに目が覚め、もっとうまくできるようになると、かみしめようとする前に目が覚めます。
 ほとんどできるようになると、朝目が覚めたときに、夜中に一度もかみしめていなかったと確信をもてるようになります。

Q3:はぎしりやかみしめをするのではないかと気になって、よく眠れなかったり、かえってストレスになってしまうのですが、どうしたらいいでしょうか?
 ⇒負担になるほど深刻にならないでください
 「やってはいけないんだぞ」などと言い聞かせないで、穏やかな顔の自分をイメージするようにして、リラックスして眠ることに重点をおいてください。
 もし、気がかりがあってどうしてもリラックスできないときは、何が心に引っかかっているのかカウンセリング等を利用して見つめなおすことも効果的です。

 終わりに
 はぎしり・くいしばりについてお解りになりましたか?
 夜間のはぎしり症状が強いとき、なかなか改善されないときには、このリラックス方法と併用して寝るときにマウスピース(ナイトガード)を使います。歯科医院でお口の型を採って作りますので、ご相談ください(保険が適応されます)。
 はぎしりやくいしばりに気づいた方は、ぜひ上記のリラックス方法をマスターして癖を解消してください。

        

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