聡明な自分自身の建設を

私が創立した創価女子短期大学に来てくれて、本当にありがとう――池田先生が感謝を述べつつ、短大で特別講義を行う(2002年10月1日)
<本年、開学35周年を迎えた創価女子短期大学。創立者・池田先生は、折あるごとに、勉学や生活の指針を短大生に贈ってきた。2002年10月1日には、担当教員の了解を得て特別講義を行い、「学問と人生と幸福」について語った。同窓生、在学生、未来の短大生、そして全ての女性たちへの励ましとして紹介する。※上下2回に分けて掲載。>
すべての努力は、人生の宝です。一生の宝であり、幸福の宝です。
悠長に遊んで、ただ楽しめばいいという浅はかな青春を生きた人は、必ず、後悔します。後になって苦しむものです。人生は、そんな生やさしいものではありません。
山越え、谷越え、険難の峰を歩みながら、正しく強く、つくりあげていく人生――そこに幸福があるのです。建物をつくる場合も、毎日毎日、一生懸命、一日も欠かさず作業して、最後に、壮大なる大殿堂ができあがる。
人生も、同じです。
勉強は、幸福になるためです。人生の目的も、学問の目的も、幸福になるためです。
知識だけでは幸福はない。賢明に生きるためには智慧が必要です。知識は、智慧の水を汲み出すポンプです。智慧が幸福への近道なのです。
聡明な自分自身を築いていただきたい。社会にあって、「あの人は、さすがだ」といわれる人格をつくることです。皆と協調し、皆をリードし、皆から尊敬される人生を歩んでいってほしい。
そのために、この創価の学府で学ぶ一日一日が大事なのです。

“知性の乙女”たちが学ぶ創価女子短大の校舎
良書に親しもう
<続いて話題は“良書との出合い”に移った。先生は、作家モーパッサンの小説を通して、「女性にとっての幸福」に言及した>
若き皆さんは、ぜひとも良書に親しんでいただきたい。心を豊かにする小説。味わい深い古典。世界的な大文学。これらを読むことは、青春時代の宝です。
現代は、低俗な言論が横行している。人の悪口を書いては、社会に迷惑をかける。人の不幸を喜びながら、じつは自分が不幸の道を転落していることを知らない――そう警告する識者は多い。
皆さんは、どこまでも幸福になる道を歩んでいくことです。
さて、フランスの作家モーパッサンに、『女の一生』と題する長編小説があります。主人公は、まだ二十歳前の乙女ジャーヌ。彼女は地方貴族の令嬢。世間の苦労も喧騒も知らずに育った。清純な美しさに輝いていた。
やがて彼女は、貴族の好青年と出会い、大勢の人に祝福されて結婚する。人生のすべての幸福を手にするかに見えた。
しかし、いざ、結婚してみると、心が通い合わない。夫には幻滅させられることばかり。
夫の裏切り。敬愛してやまない自分の母の死。そして夫の死。
ジャーヌは、いやな思い出を全部、忘れたかった。全身あげて一人息子のことに没頭した。それだけが楽しみだった。
それが災いしたのか、甘やかされ放題の息子は堕落していった。母親にお金をせがみ、莫大な資産を使い果たした。老いたジャーヌは、住み慣れた館も手放し、魂の孤独に打ち沈んだ。
ジャーヌには、自分のもとに託された孫娘がいた。幼い生命に愛情を注ぐことが、今の彼女の喜びであった――。(『女の一生』杉捷夫訳、岩波文庫)
これは、百年以上前の作品であり、価値観も社会も、今とは違う。しかし、人生とは、幸福とは何か、人間の魂を満たすものは何なのかという問いは、時代を超えたものといえましょう。
人間革命の哲学が必要
<“短大生は一人も残らず幸福になってもらいたい”――先生は、この最高にして最大の思いを伝えるとともに、「幸福の道」を開く“人間革命の哲学”の必要性を訴えた>
現実の人生は厳しい。複雑であり、不可解である。苦労しても、苦労しても、どうにもならない。幸福を追い求めながら、実際は不幸の連続――これが、多くの人生の縮図かもしれません。
宿命を嘆き、悲運を嘆くだけの人生。そんな人生を、私は、絶対に皆さんに歩ませたくない。
では、人生を方向転換させゆく根幹は、いったい、どこにあるのか。
そこに、どうしても、人間革命の哲学が必要になってくるのです。ここにしか、間違いのない人生の幸福・勝利の道はない。
人間を不幸から幸福へと革命していく。それが人間革命です。
人生を革命するのです。その偉大なる力は、すでに皆さん方の胸中にあるのです。
自分自身をつくることです。自分の中に、幸福の引力をもつことです。自分が幸福になり、一家も一族も、友人をも救っていけるのです。
一度しかない大切な人生です。一つまた一つ、努力を積み重ね、一歩一歩、乗り越えながら、最後に必ず所願満足の人生を晴ればれと勝ち取っていただきたい。
一人も残らず、幸福になっていただきたい。それが私の心からの願いです。そのための短大の二年間です。
創価女子短期大学には優秀で立派な先輩が、たくさんいます。活躍している様子や、社会で信頼され、評価されている知らせが数多く届いてきます。本当に、うれしいことです。
どうか皆さんは、最高峰の学府に学んでいることを誇りにしながら、最高に充実した青春の歴史をつづっていってください。
(㊦に続く)

共に学びの青春二歳(ふたとせ)を! 昨年8月に行われた短大のオープンキャンパス
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