滝山祭の席上、学生たちの熱演をたたえ、エールを送る池田先生(1994年7月、創価大学池田記念講堂で)
25年前の1994年7月3日、東京・八王子市の創価大学池田記念講堂で「滝山祭」の記念フェスティバルが盛大に開催された。
創立者の池田先生は、チリ共和国のエイルウィン前大統領夫妻、ボリビア共和国のデル・バーリエ大学ルイス総長一行はじめ多数の来賓と共に出席。この日、エイルウィン前大統領に、創大名誉教授称号が贈られている。
席上、池田先生は学生たちの熱演をたたえ、スピーチ。
冒頭、南米解放の父シモン・ボリバルが、いかなる逆境でも希望を捨てずに勝利を戦い取ったエピソードに言及しながら、“人生の間断なき戦いに勝て”と訴えた。

300年にわたる植民地支配を打ち破り、ラテン・アメリカに自由の夜明けをもたらした彼の人生――。それは波瀾万丈の大闘争であった。順調で、安定した時など、ほとんどなかった。
一進一退の激しい戦い、また戦いの連続のなかで、ダイナミックに歴史を転換していったのである。
「逆境に強い」――これこそが、彼の誇りであった。
とくに、南米の独立を実現する直前、彼は、生涯でもっとも悲惨とさえ言われる窮地に立たされていた。
当時、独立に反対する旧勢力が猛然と巻き返してきていた。そのため、ボリバル側には負け戦が重なった。
加えて、彼自身も、重い病に倒れてしまったのである。
見舞いに訪れた友は、あまりにやつれたボリバルの姿を見て、涙がこぼれそうになったという。
その友が、味方の陣営の情勢の厳しさを嘆きながら、ボリバルにこう尋ねた。「これから、いったい、どうするつもりですか?」
ふつうであれば愚痴や弱音をこぼすところであったろう。
しかし、ボリバルは違った。病に憔悴し、くぼんだ目を鋭く光らせながら、きっぱり、一言こう言ったのである。「勝利する!」と。
逆境にこそ燃える、逆境にこそ一人、敢然と戦う。それが「獅子」である。
「大樹」のごとく、「獅子」のごとく、諸君は強き、強き自分自身を探求し、確立していただきたい。
どん底の苦しみにあっても、ボリバルの胸中の一念は、炎のごとく、赤々と燃えていた。
とともに、その頭脳は、休むことなくフル回転していた。
最大の苦境の時にこそ、最大の勝利の因が刻まれる。このことを私も繰り返し教えてきた。
そして、ついにボリバルは、見事な逆転劇で、ラテン・アメリカの解放を勝ちとる日を迎えた(1824年)。
青春も、人生も「間断なき戦い」である。
ゆえに、皆さんも、決して目先のことに紛動されてはならない。
そんな哀れな、小さな生き方をしてはならない。
何があっても悠々と、英知を磨きながら、楽観主義で、光輝ある自分自身の歴史を築いていただきたい。
今日から明日へ
続いて池田先生は、「民主チリ」の夜明けを開いたエイルウィン前大統領の偉大な足跡を紹介した。前大統領と先生は対談集の発刊に向けて、本格的に対話を開始。1997年10月、『太平洋の旭日』として結実した。

本日、ご来学くださったエイルウィン前大統領も、祖国チリが、いちばん大変なときに、民衆のために立ち上がられた勇者であり、英雄であられる。
16年余に及ぶ軍事独裁に終止符を打ち、偉大なる「民主チリ」、またラテン・アメリカの発展に尽力してこられたことは周知のとおりである。
「環太平洋の新時代」を開かれたことも、有名な歴史的事実である。
今世紀を代表する指導者であり、もっとも敬愛する哲人政治家の一人であられる。
前大統領は、こう喝破されている。
「民主主義は、単なる権力闘争ではない。自由、平等、正義、連帯などの価値観を社会で生かし、適用するための闘争である」。また「民主主義は、人間への敬意、尊敬、友愛等を意識することが重要である」と。
まことに、かみしめるべき至言である。
さらに池田先生は、前大統領が重責を果たした後も、発展途上国の貧困の打開など、重大な課題に挑戦してきたことに触れつつ、学生たちにエールを送った。
「なぜ、わざわざ、そのような見返りの少ないテーマに挑戦するのですか?」と質問されて、(前大統領は)こう答えられた。
「私は、未来を展望し続けたいのです。私は『これで終わりだ。さて、書斎にこもって、自伝でも書こう』とは、言いたくありません。今日まで、信じてきた信念を掲げ、さらに戦い続けたいと思うのです」
そのような指導者が、世界に何人おられるか。
日本からも、このような指導者が出てもらいたい。民衆のために、私は憤激をもって、「信念の大指導者、出でよ」と叫びたい。そして、諸君が必ず、きょうのこの光景を思い浮かべながら、新しき時代の大指導者となることを信じたい。
仏法でも「現当二世」と説いている。現在から未来へ、きょうから明日へ――。
後ろを振り向かず、ただ前を見つめて進んでいく。
この爽快な青春の心で生きれば、太陽はいつもすがすがしく輝く。
平和の連帯を
最後に池田先生は、海外からの留学生の演技に心からの感謝の言葉を述べ、平和のスクラムを世界へと語った。
私どもは、あぶくのように儚い世間の栄華など、はるかに見おろしながら、崩れざる「平和のスクラム」を世界に広げていく。それは、政治や経済などよりも、もっと深く、もっと強く、もっと確かな「精神の連帯」なのである。
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