妙法の国 とわにくずれじ
【御文】
日蓮が慈悲曠大ならば南無妙法蓮華経は万年の外・未来までもながるべし
(御書329ページ、報恩抄)
【通解】
日蓮の慈悲が広大ならば、南無妙法蓮華経は万年のほか、未来までも流布するであろう。
●小説の場面から

〈1961年(昭和36年)10月、イタリアを訪問した山本伸一は、夜、古代ローマ時代の遺跡であるフォロ・ロマーノで思索を重ねる〉
伸一は思った。
――繁栄を誇ったローマ帝国が滅びゆくことを、当時の人びとは、想像することができたであろうか。人の世は栄枯盛衰を避けることはできない。永遠に続くと思われたローマも、帝政の始まりから約五百年にして、西ローマ帝国の滅亡を迎えた……。
しかし、大聖人は「日蓮が慈悲曠大ならば南無妙法蓮華経は万年の外・未来までもながるべし」と仰せである。
妙法は永遠である。なれば、その妙法を根本に築かれた人類の平和と繁栄もまた、永遠であるはずだ。
それは、武力や権力の支配に対して、人間性が勝利する“精神の大世界”といってよい。この永遠なる“精神の大世界”、すなわち“妙法の国”を、一人ひとりの胸中に築き上げ、人間共和の「永遠の都」を建設することがわが創価学会の使命だ。
新しき人類史の扉を開くために、断じて成し遂げなければならない。
ローマの月を仰いで、こう誓う伸一の胸に、一首の和歌が浮かんだ。
ローマの
廃墟に立ちて
吾思う
妙法の国
とわにくずれじ
(「歓喜」の章、158~160ページ)
何ものも恐れぬ「師子の道」
【御文】
師子王は百獣にをぢず・師子の子・又かくのごとし
(御書1190ページ、聖人御難事)
【通解】
師子王は百獣を恐れない。師子の子もまた同じである。
●小説の場面から

〈62年(昭和37年)、「大阪事件」の無罪判決を勝ち取った山本伸一は、関西本部で幹部たちに、学会精神を語る〉
「私は何ものも恐れません。大聖人は大迫害のなか、『世間の失一分もなし』(御書九五八ページ)と断言なされたが、私も悪いことなど、何もしていないからです。
だから、権力は、謀略をめぐらし、無実の罪を着せようとする。
私は、権力の魔性とは徹底抗戦します。『いまだこりず候』(御書一〇五六ページ)です。民衆の、人間の勝利のための人権闘争です」
それは、権力の鉄鎖を断ち切った王者の師子吼を思わせた。彼の目には、不屈の決意がみなぎっていた。
創価学会の歩みは、常に権力の魔性との闘争であり、それが初代会長の牧口常三郎以来、学会を貫く大精神である。(中略)
それゆえに、学会には、常に弾圧の嵐が吹き荒れた。しかし、そこにこそ、人間のための真実の宗教の、創価学会の進むべき誉れの大道がある。御聖訓には「師子王は百獣にをぢず・師子の子・又かくのごとし」と。
広宣流布とは、「獅子の道」である。何ものをも恐れぬ、「勇気の人」「正義の人」「信念の人」でなければ、広布の峰を登攀することはできない。そして、「獅子の道」はまた、師の心をわが心とする、弟子のみが走破し得る「師子の道」でもある。
(「獅子」の章、354~355ページ)
ここにフォーカス/「絶対的幸福」とは
近年、東京・荒川区や新潟市など、いくつかの自治体が「幸福度」に関する調査と、その向上の取り組みを進めています。国連でも、「世界幸福度調査」を発表しています。
国連の調査は、国民1人あたりのGDP(国内総生産)や人生選択の自由度など、6項目を数値化して幸福度を算出していますが、幸福の捉え方は一様ではありません。
小説『新・人間革命』第5巻「勝利」の章には、第9回女子部総会で、女子部のリーダーが、幸福について語る場面が描かれています。
彼女が語った「幸福観」は、戸田先生が示した「絶対的幸福」「相対的幸福」を踏まえたものでした。
「相対的幸福」とは、経済的な豊かさや社会的な地位など、自分の外の世界から得られる幸福です。一方、「絶対的幸福」とは、困難や試練にも負けることなく、生きていること自体が楽しいという境涯の確立を言います。
同章には、こうあります。
「女性の幸せとは、人間の幸せとは、学歴や財産、あるいは結婚といったことで決まるものではない。すべては、人間として、自分に勝つ強さをもつことから始まる」
仏法で説く「幸福」は、自分の外にあるのではなく、自身の胸中にあります。その“幸福の宮殿”の扉を開く実践が、唱題であり、日々の学会活動なのです。
半世紀超す執筆に思う 識者が語る/アメリカの未来学者 ヘイゼル・ヘンダーソン氏
●会長のビジョンは最高の贈り物

「一人の人間における偉大な人間革命は、やがて一国の宿命の転換をも成し遂げ、さらに全人類の宿命の転換をも可能にする」――池田SGI会長が、このようなテーマを掲げた小説を、長年にわたり執筆し、完結を迎えたことに、心から称賛の意を表したいと思います。
私は、「人間の変革」に対するSGI会長の信念に、多大な啓発を受けてきました。何よりも会長はこの執筆活動を、人間を抑圧するさまざまな力と戦い、多忙を極める中で続けてこられました。会長が示す未来への人間主義の哲学とビジョンは、人類への最高の贈り物です。
会長が記しているように、小我を超克し、「共感」と「協調」の方向へと歩みを進めてこそ、私たち人類はすべての生命と共に、この地球上で生を営み続けることができます。
小説『新・人間革命』では、SGIという組織が、一人一人の「人間の変革」を根本にして、人類の平和の連帯を築いてきた歴史が描かれています。
いかなる団体も、人間自身のエゴと向き合い、それを乗り越えていくことができなければ、発展はあり得ません。
これまで私は、さまざまな国のSGIメンバーとお会いしてきました。皆さんは常に、自らのエゴや他者の偏見を打ち破り、異なる人種や文化の人々との「共通点」を見いだし、差異を尊重しようとしてきました。そして、心と心を結び合うことに成功しています。
私自身の社会活動の原点は、子どもを育てる一人の母親として、環境問題の解決へ立ち上がったことでした。小説の中で池田会長が、リーダーとして果たすべき女性の役割について記されていることに、深い共感を覚えます。
持続可能な未来を実現するには、女性も男性も対等のパートナーとなり、それぞれに特有の可能性と能力を、最大限に発揮していくことが求められます。
SGIの運動を率いる女性の方々とお会いして実感することは、どなたも、人間の最良の部分が引き出され、リーダーとして実に優れているということです。また、若い世代の女性が、平和のために行動していることに大きな希望を持ちます。
SGIの女性の皆さんは、私にとっても大事な啓発の源です。平和と共生の未来を築くために、皆さんがグローバルな運動をリードしてくださることを、心から期待しています。

Hazel Henderson イギリス生まれ。後にアメリカへ移住し、市民運動家として多くの草の根の活動をリードする。池田先生と対談集『地球対談 輝く女性の世紀へ』を発刊している。
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