11・18「創価学会創立記念日」特集

カナダの名門ラバル大学からの「名誉教育学博士号」授与式で、同大学のドゥニ・ブリエール学長と固い握手を交わす池田先生(2010年5月、東京・八王子で)。席上、先生は語った。「教育の連帯を世界に広げ、正義と英知の人材を続々と育てる。ここにこそ平和の創造があります。これが教育の根本です」
「社会のために価値を創造し、個人の幸福を実現していく――こうした創価教育の哲学は、北米の教育機関では、なかなか耳にすることのない思想です」(カナダのゲルフ・ハンバー大学「世界市民に関する創価教育研究所」のポール・シャーマン所長)。創価教育は今、世界各地で活発に研究が行われ、文化や価値観の違いを超え、普遍的な教育哲学として広がっている。11・18「創価学会創立記念日」特集㊦では、「創価教育の飛躍」をテーマに、世界の諸大学に設置された創価教育の研究機関とともに、識者の声を紹介する。
【アメリカ】デポール大学
全米最大のカトリック系私立大学として知られるデポール大学。その教育学部に2014年4月、「池田大作教育研究所」が設立された。創価三代の教育思想を研究する北米初の機関である。
15年1月の開所式でジェイソン・グーラー所長は、「池田博士が標榜する生命尊厳、エンパワーメント(内発的な力の開花)を重視した教育実践は、地域社会の中で世界市民を養成する鍵となる」と言及。16年12月には、池田先生に「名誉人文学博士号」が授与された。
同大学では現在、「世界市民育成のための価値創造教育」オンラインコースが、修士・博士の両課程で行われている。昨年、開催された「池田・創価教育研究国際会議」には、多くの教育関係者が参加。先生の思想と創価教育の現代的役割についてディスカッションや講演が行われた。
三代会長の教育思想の探究に力を注いでいる。

アメリカ有数の都市シカゴに立つ名門デポール大学のキャンパス
【スペイン】アルカラ大学
2017年、スペイン・アルカラ大学の教育学部で、創価教育の理念を取り入れた授業「幸福のための教育」が開講。地元紙で特集が組まれるなど、大きな反響を呼んだ。
18年1月、同大学は池田先生に「名誉教育学博士号」を授与。翌19年、創価大学との共同研究所として、「池田大作『教育と発達』共同研究所」が設立された。欧州の大学・高等教育機関で初の“池田思想”の研究所である。
アレハンドロ・イボラ所長は「私は、授業で学生に伝えていることがあります。それは〈『社会のための教育』から『教育のための社会』へ〉との池田博士の哲学です」と語る。 昨年、同研究所が主催したシンポジウムでは、軍縮と持続可能な社会の構築に向けた教育のあり方を巡って、活発な議論が交わされた。
アルカラ大学の創立は1499年とされる。歴史と伝統を誇る大学から、創価教育の曙光が輝き始めている。

選択科目「幸福のための教育」の授業風景(2018年1月、アルカラ大学で)
【カナダ】ゲルフ・ハンバー大学
カナダのゲルフ・ハンバー大学は、20年前の2002年に誕生した。この新しい大学にも、創価教育の理念が広がっている。
同大学では、13年から「創価教育と幸福の探求」をテーマに、日本留学プログラムを推進。学生が創価大学などを訪問してきた。
17年、「創価教育研究会」が発足。学生と教員が一体となって、創価教育の歴史などについて学んできた。その取り組みが評価され、19年11月、同国初の創価教育の研究機関「世界市民に関する創価教育研究所」が誕生した。
本年4月、同研究所が主催して、第1回「国際シンポジウム」が開催された。「国際社会環境における価値創造教育の実践」をテーマに、最新の研究成果や実践報告が共有された。
同大学で創価教育の現場の視察が始まって、明年で10年。創価の教育哲学の研究が、さらに進められる。

2016年5月、ゲルフ・ハンバー大学の学生らが創価大学を訪問した
〈識者の声〉
台湾・中国文化大学 李彦良博士

あらゆる分野で実践できる哲学
来年、中国文化大学・池田大作研究センターが主催する「池田大作平和思想研究国際フォーラム」を4年ぶりに行う予定です。14回目の開催となり、すでに複数の大学が参加を表明しています。
わが大学の理事長を務めた故・張鏡湖氏や、林彩梅元学長は、1994年以来、何度も池田先生との出会いを重ねてきました。先生の世界平和の闘争の歩みを、大学を挙げて学び、深めてきました。張理事長は先生との対談集『教育と文化の王道』を上梓しています。
2003年、池田大作研究センターが設立されました。研究をさらに進めるため、皆が意見を発表し合える場を設けようと、07年から国際フォーラムを主催してきました。
私は第6回の開催から同センターの所長を務めています。以前、“平和思想を実践することは、なぜこうも難しいのか”と、初代所長の林元学長に漏らしたことがあり、私を池田大作研究センターに誘ってくれたのです。
池田先生が現実の上で、人々の幸福に、社会の平和に貢献されてきた事実を知り、衝撃にも似た感動を覚えました。先生は平和思想を知識として伝えるだけではなく、自ら行っている「平和思想の実践者」です。
これまでのフォーラムでも、池田思想をいかに実践していくか、いかにそれぞれの専門に応用することができるか、議論を深めてきました。先生の思想を基にした時、工業で、心理学で、さらには芸術面でと、あらゆる分野で、新たな知見が開けていくことが、各大学から研究成果として発表されてきました。
私は特に「利」の価値に重きを置く経済の世界でこそ、先生が主張する「他者尊重の思想」が広がっていく必要性があると考えています。例えば、SDGs(持続可能な開発目標)の実践と企業利益を結び付けるためには、池田思想のような深い哲学が不可欠ではないでしょうか。
私が担当する企業経営の授業では、修士課程の院生たちに、先生の対談集を選んでもらっています。経営の実例に、先生の思想を照らし合わせ、“どうすればもっと改善できたか”など、皆で議論を交わしています。
多くのシンポジウムにおいて、学生は、ともすれば聞くだけの受け身の参加になりがちです。そこで、13年から「国際青年フォーラム」も開催し、学生たちがより発言しやすい池田研究の発表の場としています。
ある時は、卒業生が登壇し、就職先の企業において、池田思想を実践した実体験を報告してくれたこともあります。青年フォーラムもコロナ禍で中断していましたが、間もなく再開します。
池田思想は普遍的で、学問分野の垣根がありません。より多くの学識者と、研究していきたいと思っています。
カナダ・ラバル大学 ヴァンサン・フォーク博士

平和構築へのビジョンを示す
2010年5月、ラバル大学は、池田大作博士に対し、「名誉教育学博士号」を授与しました。当時の学長は授与の辞で、池田博士が世界市民の模範であり、対話を通し、世界平和の構築を目指していることに、深い感銘を受けたことを述べました。
本年、教育学部、人間科学部、宗教学部の3学部が協力して、「世界市民・対話・平和のための池田教育研究所」が開設されました。
名称には「世界市民」「対話」「平和」という、博士の思想と行動を象徴する、三つの概念が掲げられています。
私自身、この三つの概念の関連性を分析する授業を、博士の著作や提言を教材に用いて行ってきました。
授業ではまず、古代ギリシャで生まれた「世界市民」という概念について説明します。グローバル化が進み、人類が国境を越えて複雑に依存し合う現代にあって、“世界市民とはどうあるべきか”というテーマは、学術的にも重要なものになっています。
1996年、池田博士は、「『世界市民』教育への一考察」と題する、アメリカ・コロンビア大学での講演で、世界市民の要件について、大変に斬新な視点を示しました。
一、生命の相関性を深く認識しゆく「智慧の人」
一、さまざまな差異を尊重し、理解して、成長の糧とする「勇気の人」
一、身近に限らず、苦しんでいる人々に同苦し、連帯しゆく「慈悲の人」
「世界市民」というワードは、ともすれば抽象的な概念に陥りがちです。
池田博士が示した三つの視点によって、「世界市民」は具体性を帯び、個人が実践するビジョンとなります。それは、学生たちの新たな人生観ともなっています。
続いて、「対話」の実践の利点を提示します。
博士の姿こそが模範です。多彩な分野の対談者一人一人を尊敬することで、相互理解が深まり、「平和」への希求が生まれているのです。
授業の最終段階では、博士の「平和」の精神性について、皆で考察します。
博士の「平和」ビジョンの本質は、「生命尊厳」です。人間を、生命を本質的に尊ぶ姿勢に、平和の実相が照らされています。
授業を通して、学生と教員は自らの努力によって、世界市民へと成長しうることを明確に理解します。また、対話の実践に励むことで、身近な人間関係の中に、平和構築の知恵があることを学びます。今後、さらに工夫を重ね、学生の見識を育む授業にしていきたいと考えています。
先日、創価大学で大変に有意義な研修を行いました。創大の修士課程で学びたいと希望するラバル大学の学生もいました。ますます交流を充実させ、池田博士の思想と行動を、より深く学び、実践できるよう取り組んでいきます。
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