Ⅱ部 第16回 2020年07月30日 御書根本を貫く民衆仏法の学会教学⑤ |
〈出席者〉西方男子部長、大串女子部長、樺澤学生部長、林女子学生部長 仏法は全人類に開かれた世界宗教 ◆大串 世界宗教として192カ国・地域に創価の連帯は広がり、昨年はアフリカ31カ国で教学実力試験が行われるなど、年々、人間主義の仏法哲理を学び、実践する運動が活発になっています。世界広布を進める上で、宗教、思想、文化、伝統の違いなどを、どう捉えるかが大事になってくると思います。 ◇原田 日蓮大聖人の仏法は今、太陽が地球上をあまねく照らすように、世界の人々に希望と勇気の大光を送っています。 小説『新・人間革命』第1巻の冒頭「旭日」の章には、「随方毘尼」という法理に基づいて、私たちが踏まえるべき重要な考え方が示されています。 例えば、アメリカには正座の習慣がありません。しかし、世界広布の旅で初めて訪れたハワイで、先生に同行した当時の幹部ですら、“勤行の時に正座する習慣を変えてはいけないのでは”と言っていたのです。 これに対して先生は、「随方毘尼」の考え方を示され、「御本尊への信仰という、大聖人の仏法の本義に違わない限り、化儀などは各地の風俗や習慣、時代の風習に従ってもいいんだよ」「大聖人の仏法は、日本人のためだけの教えではなく、全世界の人類のための宗教なんだからね」と明確に示されたのです。 ![]() カメルーンで行われた教学実力試験(昨年10月)。アフリカ31カ国で、前回の3倍の受験者が研さんの成果を発揮した ◆西方 御書には「(随方毘尼という)戒の心はいたう事かけざる事をば少少仏教にたがふとも其の国の風俗に違うべからざるよし仏一つの戒を説き給へり」(1202ページ)と仰せです。 ◇原田 大切なのは、御本尊への「信」があるかどうかです。大聖人が“少々仏教と違うことがあっても、その国の風俗に背くべきではない”とまで仰せの通り、仏法は開かれた精神という世界性を持つ宗教です。 御書には「まことの・みちは世間の事法にて候」「世間の法が仏法の全体と釈せられて候」(1597ページ)と仰せです。真実の仏法は、社会を大切にし、人々のため、地域のために貢献し、活躍していくためにこそある。その実践の人が智者です。 差異を超えた連帯で平和の世紀を ◆林 『新・人間革命』第30巻<下>「誓願」の章で先生は、1995年(平成7年)に制定されたSGI憲章について触れられています。その中に「仏法の寛容の精神を根本に、他の宗教を尊重して、人類の基本的問題について対話し、その解決のために協力していく」とあります。 ◇原田 その通りです。先生は「『世界の平和』と『人類の幸福』を実現するために大切なことは、人類は運命共同体であるとの認識に立ち、共に皆が手を携えて進んでいくことである。これを阻む最大の要因となるのが、宗教にせよ、国家、民族にせよ、独善性、排他性に陥ってしまうことだ。人類の共存のためには、“人間”という原点に立ち返り、あらゆる差異を超えて、互いに助け合っていかねばならない」と強調されています。 閉ざされた教条主義に陥る宗門 ◆西方 一方で宗門は、時代錯誤の閉ざされた教条主義、権威主義で、信徒を隷属させようとしました。例えば、学会の会合でベートーベンの第九「歓喜の歌」を合唱したことに対し、“ドイツ語で歌うことはキリスト教の神を賛嘆する「外道礼讃」”などと滑稽な非難を繰り返し、日本や世界の識者からも呆れられていました。 ◇原田 人類の精神遺産である文化を否定することは、人間性を否定することに等しい。「誓願」の章につづられている通り、「宗教が教条主義に陥り、独善的な物差しで、文化や芸術を裁断するならば、それは、人間のための宗教ではなく、宗教のための宗教」です。 そもそも、宗教活動の基本は対話です。その対話すら拒否し、一方的に広宣流布の前進を妨害してきたのが宗門です。 学会は大聖人の仰せ通りに御本尊根本、御書根本を貫き、対話主義に徹し、広宣流布を目指して戦ってきました。だからこそ全てに勝利し、大発展を遂げてきたのです。 ◆大串 イタリア・新宗教研究所のマッシモ・イントロビーニェ所長は、かつて次のように語られていました。 「(イタリア創価学会が成功した最大の理由は)伝統を捨てなさい、こちらの文化に乗り換えなさいということは全く言わないで、むしろ地元の文化に合致した形で、イタリア版仏教という形でメッセージを伝えた、これが素晴らしい」と。 ◇原田 イタリア創価学会は、2015年に国家との間でインテーサ(宗教協約)が結ばれ、社会からの期待と信頼は一層高まっています。今回の新型コロナの感染拡大に対しても、さまざまな形で貢献し、コンテ首相からも、人間主義の行動と連帯、責任感に感嘆を伝える言葉が寄せられています。 池田会長は最も感銘を受けた人 ◆樺澤 人間主義は、法華経の精神でもあります。東洋哲学研究所(東哲)が中心となって、06年から始まった“法華経展”は、イスラム文化圏のマレーシアやインドネシア、上座部仏教国のタイをはじめ、欧州、南米など世界17カ国・地域で約90万人が観賞し、共感の輪が大きく広がっています。 ◇原田 先生は各国の宗教、文化、民族などについて正しく認識していくことが大切であるとされ、東洋をはじめ世界の思想・哲学・文化を多角的に研究する機関として、1962年1月に東哲の前身となる東洋学術研究所を発足されました。これは、先生の創立する各種の文化・教育機関の先駆けでもありました。こうした先生の打たれた手が一つ一つ実を結び、今日の世界との連帯があるのです。 ![]() 首都バンコク近郊のタイ創価学会本部で開かれた“法華経展”を観賞する上座部仏教の僧侶学校の生徒ら(2017年6月)。57日間の会期中、約12万5000人が来場し、大きな反響を呼んだ 「人間と人間」が語らう――そこに友好の道が ◆西方 先生ご自身が、イスラム教、キリスト教、ヒンズー教をはじめ、世界の宗教指導者、識者とも宗教間対話、文明間対話を続けてこられました。 ◇原田 イスラムでは、インドネシアのアブドゥルラフマン・ワヒド元大統領や、イラン出身の平和学者マジッド・テヘラニアン博士らと、平和と共生の社会建設への方途を巡り、対談されています。 キリスト教については、イギリスの宗教社会学者ブライアン・ウィルソン博士、ドイツの哲学者ヨーゼフ・デルボラフ博士、米ハーバード大学の宗教学者ハービー・コックス名誉教授らと対話。さらに、インド文化関係評議会元会長のカラン・シン博士、米デンバー大学の国際法学者ベッド・ナンダ博士らヒンズー教を背景とする識者、またユダヤ教の識者とも交流を結んでこられました。 先生は、「戸田記念国際平和研究所」の初代所長に就任したテヘラニアン博士との会見の折、このように語られました。 「人間と人間が語り合うこと。これが全ての始まりです。宗教を前面に出して、『宗教と宗教』の話し合いをしても、そこからは友好は開けません。そうではなく、まず人間です。『人間と人間』の対話です。人間と人間が心を開き合い、知り合い、仲よくなれば、そこからいくらでも相互の違いに対する理解も生まれるものです」と。 この人間主義に基づく先生の平和への対話に、私たちも学んでいきたいと思います。 ![]() インドネシアのワヒド元大統領と会見する池田先生(2002年4月、八王子市の東京牧口記念会館で)。仏教とイスラム教を巡る語らいは、対談集『平和の哲学 寛容の智慧』に結実した ◆林 本年には、米モアハウス大学キング国際チャペルのローレンス・カーター所長が、先生から受けた啓発について著した書籍の日本語版『牧師が語る仏法の師』が発刊されました。 ◇原田 バプテスト教会(プロテスタントの教派)の牧師である所長は、ガンジーとキング牧師を自らの師と定め、長年、非暴力の運動を進めてきた方です。先生との出会いを重ね、対談集や平和提言などを読み深めていく中、その思想と人格に深く感動された一人です。 『牧師が語る仏法の師』の中で所長は「池田会長こそが、その誠実さ、学識、行動力、高潔な人格、業績、グローバルな理念において、最も感銘を受けた人物である」と語られています。 これは先生が、文化や宗教の違いを超え、人間主義の仏法を基調に平和の世紀を開く行動を貫かれてきた結果です。 ◆樺澤 学会伝統の教学部任用試験は、2016年から名称を「教学部任用試験(仏法入門)」とし、新会員だけでなく多くの会友も仏法を学ぶ時代となりました。世界中でも教学試験が実施されています。 ◇原田 近年は任用試験で仏法哲理を学ぶことをきっかけに、入会に至る人も少なくありません。それだけ、人々が確かな生命哲学、人生の指針を求めている証左でもあるでしょう。 また、教学研修会も世界各国で行われ、皆が真剣に大聖人の仏法を学び、信心の成長の糧としています。すごい時代になりました。 分断や対立が深刻化する現代世界において、創価の人間主義の哲学は、人々を結び、共生の社会を築く希望の光源です。 大聖人は、「天晴れぬれば地明かなり法華を識る者は世法を得可きか」(御書254ページ)と仰せです。私たちは、試練の時代に敢然と立ち向かい、「太陽の仏法」で地域を、社会を、世界をさらに照らし、晴らしていこうではありませんか! (この項終わり) |