第9回「写真――眼で詠む詩」 2020年06月16日 |
![]() 北海道指導の折、激励行の合間に札幌・月寒の花菖蒲園を訪れ、咲き誇る花々にカメラを向ける池田先生。香峯子夫人が見守る(1990年7月) 池田先生の写真は「眼で詠まれた詩」――フランス・ルーブル美術館の絵画部長を務めた美術史家ルネ・ユイグ氏は、そう評した。 先生が写真の撮影を本格的に開始したのは、1970年ごろ。過労で体調を崩した折、カメラを贈られ、撮影した写真をそのお礼に届けるためであった。 しかし「自由な写真旅行とか、写真行脚とはいかない」。「そこで、会合等で、遠出をした場所を選んで、たまにファインダーをのぞくということを覚えた」 最初に本格的にレンズを向けたのは「月」だった。71年6月、北海道・函館近郊の大沼湖畔で周囲を照らす壮麗な月を目にした先生は、“日夜、戦っている学会員の皆さまが、この月の光に照らされ、英知輝く人になってほしい。名月天子よ、我が友を見守ってください”との願いを込めて、シャッターを切った。 今しかない“この一瞬”を捉える。先生にとって写真とは“自然との対話”であるとともに、同志に励ましを送る、瞬間瞬間の行動の結実なのである。 ![]() 池田先生が使用したカメラ。1979年発売のキヤノン製㊧と、88年発売のニコン製の一眼レフ 先生は71年以来、奮闘する友の励みになればと、折に触れてカメラを手にしてきた。移動の車中や海外を訪問した際など、激務の合間に出合った“瞬間の美”を捉えた作品は「自然との対話――池田大作写真展」に。82年の初開催から、これまで世界41カ国・地域、151都市で行われ、好評を博している。 しばしば同展のポスターなどにも使用され、広く親しまれる一葉がある。95年11月に撮影された、ヒマラヤを収めた写真。海外の高名な画家も「この写真には物語があります」と賛辞を惜しまない。 変わりやすい天候のため、なかなか目にすることはできないという夕日に染まった“世界一”の雄姿を、雲が開けた一瞬で収めた。 この折、集まってきた子どもたちに池田先生は「仏陀は、偉大なヒマラヤを見て育ったんです。あの山々のような人間になろうと頑張ったのです。堂々とそびえる勝利の人へと自分をつくり上げたんです。みなさんも同じです」「必ず、偉い人になれるんです」と語り、励ました。 “自然は偉大! 生命は偉大! 全ての人に希望を!”――深い願いが投影された先生の写真は、目にする人を鼓舞し続ける。 |